「ナチ・プロ」の正体とは? 人間をまるでモンスターのように狩り、バグのように修正しようとする人たち【仲正昌樹】
彼らが「罠」と言っているのは、ブックレット(『プラスの効果をもたらしたか、といった問題に触れるのは、教祖様の仕掛けた罠にはまってしまって、逃げ出せなくなることを意味する。
で“論破”されている論点だ。ナチ・プロは、教祖様が、潜在的ナチス=モンスターが言いそうなことを予め予見して、ブックレットで予め論破している、と信じている。従ってナチ・プロに言わせれば、そうした教祖様が先手を打っておいた問題、例えば、アウトバーン建設がドイツ経済に ごく普通に考えれば、教祖様の予めの“反論”が不十分であれば、そこを問題にするのは当然のことなのだが、ナチ・プロは自分たちのやっている“論争”あるいは“レスバ”を、『キングダム』
私が「打つ手を間違えた」と言っている者もいた。恐らく、(自分たちと同じように)私もネット上で強い敵と戦って倒し、自分の戦闘力を上げようとしたとでも思ったのであろう。彼らにとって、「潜在的ナチス」を倒すのは、全体主義や排外主義の台頭を防ぐためではなく、自分の戦闘力を上げるためである。ナチ・プロには同調する大学教員に「jediの騎士」を名乗る者もいた。私のようなのを叩いて「とどめを指す」とかなりのポイントがゲットできるのだろう。私のプロフィールを見て喜んでいるのがいた。
彼らが、正義感情の暴走で暴れているというより、ゲーム感覚でやっているのは、「潜在的ナチス」を叩く時の彼らの言葉遣いや態度から見て取ることができる。全体主義や排外主義が広がるのを本当に懸念しているのであれば、「〇〇の面でナチスも肯定的に評価できることをやったのではないか。そうでないと説明できないことが多い」、と言っているだけの人を、「潜在的ナチス」呼ばわりしたりするはずがない。
懸念をそれとなくソフトに伝えたうえで、相手の真意を探り、ナチズムが関わった現代史を一緒に学ぼう、と呼びかけるような形でなければ、相手は納得しない。モンスターとして集中攻撃を受け、疲れ切って無理やり黙らされた人は、恨みに思うだけだろう。それだけではなく、ナチ・プロにやられた反動で、本当の「プロ・ナチ」になってしまうかもしれない。「ナチ・プロがあれだけ必死に否定しているのだから、ナチスについて言われているマイナスの情報は嘘で、ナチスは善政をしていたかもしれない。対ユダヤ人政策も基本は間違っていなかったかもしれない」、という感じで。私には、ナチ・プロたちは、無暗に攻撃することで、“潜在的ナチス”から本当の「プロ・ナチ」を生み出して、ゲームを続けたがっているようにしか見えない。